ご多分に漏れず(?)キヤノンボール・アダレイといえば持っているアルバムは長いこと「Somethin' Else」だけであった。そのせいか、特段キヤノンボール・アダレイの事がお気に入りとか、特に印象深いプレイヤーであるとか、そういう認識はずっと持っていなかった(「Somethin' Else」ではキャノンボール名義は名目上だけのもので実質これはマイルスのアルバムであり、実際にどちらかというとマイルスのトランペットを中心に聴く盤なので)のだが、キヤノンボールのアルバムとしては二枚目の購入となる「Mercy, Mercy, Mercy」を聴いてまず「おや?」と思った。何だ、このとっても楽しく嬉しそうな演奏は!。もともとファンキーなジャズは嫌いではない。従いファンキージャズの代表的な演奏であるこの「Mercy, Mercy, Mercy」も俺が気に入る理由は十分にあるのだが、それ以上に演奏自体がとても楽しげなのに惹かれた。
そしてこの「In San Francisco」だ。
兎に角ご機嫌な演奏なのだ。聴いているだけでとても陽気な気分にさせられる素敵なアルバムだ。その上に、このアルバムで俺は漸く、キヤノンボールのアルトの音色の良さに気づかされた。アルトサックスのボディ全体を完璧に鳴らし切っている艶のある音と言おうか。演奏のゴキゲンさが、このしっかりとよく鳴る良い音に担保されているということが分かったのだ。そして一度楽器の「音」で惚れてしまうと、もぅダメだね(笑)。それ以降はもぅ、そのアーティストの事を半ば盲目的に好きになってしまうのだ。