今日の帰宅途上の通勤電車の中で読了。
講演録ということもありとても平易な文章であり、また同じ人間がそう長い間をおかない比較的短期間のなかであちらこちらで行った講演を集めたこともあり、発言内容には相当の重複がある。
しかしこれは言い方を換えると、この著者には、自らの信念というか哲学というか、非常に太いしっかりとした一本の筋が通っており、またこれを周りに訴えてゆこうという使命感を持っているからこそ、同じことを何度も繰り返し言い続けるのだ - と感じた。
近江商人の言葉だそうだが「三方よし」ってのはとても良い考え方だ。「売り手よし、買い手よし、世間よし」。顧客が喜ぶものを売り顧客に満足してもらい、売ることで売り手も潤い、そしてその商売が世の中の発展にも寄与するようにすることを目指せ、と。
今の日本の政治家にこそ、少しでもこうした理念を持ってもらいたいね。権力や政権(そしてカネや名声)を得ることだけが目的ではなく、そのことにより同時に、もしくは結果として少しでも国民や日本や世界が豊になるように、そう考える政治家がいったいどのくらいいるであろうか。
それにしても歳のせいか涙脆くて困る。
WFPに係わりアフリカの最貧困の現実を視察にいったくだりで、マラリアに罹患した赤子を、ある種の諦観の面持ちで静かに抱く母親のエピソードには参った。日本人の場合、災害などでニュースになったときだけ寄付や援助をしがちだが、ニュースにはならずとも恒常的に援助を必要としている極貧の地域では3秒に1人のペースで乳幼児が亡くなっていっているという現実。コーヒー一杯のお金で救える命がある。今回のクリスマス月中に、僅かだとしても俺もいくらかの身銭を寄付しようと思う。