新田次郎を久しぶりに読んだ。一時期山岳小説に凝ったことがあるのだが、そういえば日本の第一人者である新田次郎の作品は今まで「八甲田山死の彷徨」と「アルプスの谷 アルプスの村」(及び表題の本にも収録されている「おとし穴」(下記参))しか読んだことが無かった。以前はあまり意識していなかったが、新田次郎の文体は無駄が少なくて心地よい(処女作の「強力伝」の出だしこそちょっと肩肘張っている感じがするが。。。)。今回の短編集を読み、もっと他作品も読んでみようかという気になった。
ところで「おとし穴」。簡潔でありながら見事な構成・プロットと語り口。名作だねぇ。中学か高校の頃であろうか、我が親父の運転する車で夜の長距離ドライブの時だったと思う。車のラジオから流れてくる朗読小説で聴いたのがこの短編小説に接した最初だと思う。その後、何度かどこかで読んだ記憶があったのだが、この短編集で読むまでこれが新田次郎作品だとは知らなかった(^ ^;。
ところで山岳小説というと(小説というよりもドキュメンタリーに近いノンフィクションだが)、山岳の中でもかなり特殊な世界にはなってしまうが、1996年に日本人の女性登山家である難波康子も犠牲になったエベレスト山における
大量遭難死事故を題材とする「空へ(原題:
Into Thin Air)」(ジョン・クラカワー)、ならびにその本への反論書ともなる「デス・ゾーン(原題:
The Climb)」(アナトリー・ブクリーエフ)は必読書だと俺は思っているのだが、これ両方とも既に絶版の模様。何故。。。(
畑村洋太郎ではないが、この事故には我々が深く学ばねばならぬ教訓と示唆に満ちており、そのドキュメントを有る意味ディベート的にも読める両書は大変に価値が高いと俺は思っている。)